「とどのつまり、結局のところ、日本っちゅー国は強いンかどうかというと、圧倒的に弱いんじゃな」
「はぁ……」
「少なくとも、先の大戦中の日本軍はいいとこ無しじゃった――というのが、この本を読んで得られる結論の一つなのは確かじゃわい」
「いきなりなんでありますか、であります。 ちんぷんかんぷんであります」
「ん~? いやなに。ワシの見る限り、どうも最近巷じゃあ、『日本サイコー!』『この国に生まれてよかったぜィ!』 みたいな頭悪い発言が散見されとるようでのぉ。正直業腹じゃし、片腹痛いんじゃわぃ」
「? そうでありますか? 自分は少なくともそれほど聞かないであります。それに、それほど悪い発言でもないと思うであります」
「ハハ」
「おかしいでありますか、であります」
「いやいや。おかしくはない。じゃが、その論拠はなんじゃろうな、と不思議でな」
「不思議で笑うのでありますか、であります。少なくとも、自分はこの日本という国、好きであります。平和でありますし」
「平和、なぁ……? フ、あぁあぁ、確かに平和じゃろう。おそらく、この世界のどこと比較しても負けん程には平和じゃわ。あまりに平和で住人の誰もが頭ボケとるしな」
「? で、ありますか、であります」
「天国って頭使わない場所のことを言うのかものぉ、とこの国観てると推察できるわぃ。じゃからこそ、腐っていくし、クソな場所なんじゃろ。どちらもな」
「はぁ……? むしろ、どうしてそこまで言いきれるのか、この国を好意的に捉えている自分としては、それこそ論拠というものを示していただきたく思うであります」
「そうじゃな。では、この本の話をしていこうかの。今、話とるのはあくまで本の話じゃしな」
「そうでありますか、であります」
「……ふむ、どうも昨今、『先の大戦――アジア・太平洋戦争で日本がもしも勝ったなら』。なんちゅぅ荒唐無稽な話が囁かれとるみたいじゃな」
「おぉ、胸躍る話でありますな」
「ま、ありえんほどのおとぎ話なんじゃが」
「? そうなのでありますか、であります」
「絶対にありえん。……ふむ、そもそもの話からしていこうかの」
「よろしくお願いしますであります」
「『アジア・太平洋戦争』っちゅう戦争。事の起こりは満州事変までさかのぼれる。ま、簡潔に言えば中国まで進出しとった日本軍兵士が、調子に乗ってヒャホゥぶちかましたら、あらら戦争になったでござるの巻、みたいな感じじゃな」
「ヒャッホウ?」
「当時の日本は、日露戦争で勝ったりもしとったし、勢いがあったんじゃな。アジア圏の支配も順調じゃったようじゃし。で、あげく『満州』なんちゅう、自分たちに都合の良い植民地を製造したりもした」
「? はぁ」
「ま、ようするに調子こいてたんじゃな。で、結果、日中戦争勃発。中国に兵を薦めた日本じゃが、さすがにアメリカやらの民主主義、資本主義国たちが黙ってなかった。この国々は日本に『兵を引け』と交渉したわけじゃ」
「ほうほう」
「で、ま、引かんわな。調子づいとるわけじゃし。……ここで興味深いのは、実はアメリカとかの交渉じゃ、『満州』についての記述がなかったらしい」
「? といいますと、であります」
「つまり、『満州』については没交渉、黙認してもよい、と捕らえることもできる交渉の内容じゃった、と。中国からの撤退を主眼に置いた交渉が行われておったわけじゃ」
「えぇっと……、であります。混乱してきたであります」
「要するに、欧米諸国との戦争を回避する道はちゃんとあったわけじゃ。じゃが戦争は起きたわけじゃ。なんせ調子に乗っとるから」
「で、起こったのがアジア・太平洋戦争、というわけでありますか、であります」
「うむ。で、この大戦、日本だけでの戦没者数は、軍人、軍属の者が二百三十万人、民間人が八十万人、計約三百十万人もの人間が、この戦争に関わって死んだ。ふん、大した数じゃな」
「お、おぉ……。大災害でありますな」
「災害? 人災じゃよ。戦後最大の災害と言われとる東日本大震災でさえ、死者合計は一万五千人ほどじゃ。ハッ、桁が違うのぉ。人と自然、どっちが人を多く殺すのやら」
「…………」
「さらに言うとな、この三百十万の人々は、全員が全員、アメリカの銃弾やら爆撃やらで死んだ――わけじゃぁないんじゃ」
「……ガス、とかでありますか、であります」
「ちゃうちゃう。まるで違うわい」
「あ、いわゆる原子爆弾のことでありますか、であります」
「それも違う。無論、あれも大層な人でなし兵器じゃが、ここでいうとるのはそれのことじゃぁない」
「? となると……?」
「約三百十万もの人々。その全体の六十一%もの人間は、“餓死”、及び餓えによる体力の低下の末の“病死”によって命を落としたんじゃ」
「全体の六十一%……? とは、すなわち半分以上が、でありますか、であります」
「さよう。戦場は亜熱帯地域じゃ。じゃからマラリアが戦地では猛威を振るった」
「マラリア……。その当時、完治不能な病気だったのでありますか、であります」
「いんや。実際、アメリカ軍は殺虫剤ばらまいて媒介となる蚊そのものを撃退しておったし、日本でも研究は進んでいたらしい。が、対策面で後れを取った。しかも、補給が滞り栄養失調状態な兵士は、免疫機能も低下しておったのか、より、マラリアは蔓延した。“クスリが効かないマラリア”なんちゅうのも出たらしいが、一説には、栄養失調状態だからこそ、“クスリが効かないマラリア”になってしまったのでは、とのことらしいの」
「補給が滞った、のでありますか、であります。しかし、それは戦況が影響したのであって、日本軍の能力いかんとは無関係な問題ではありませんか、であります」
「ほ、そうかな? むしろ逆に、補給が滞って病気が蔓延して、多数の兵士が栄養失調になっておる時点で撤退もせず、土地に固執し、戦争に明け暮れる選択を行った無能さが浮き彫りになっとるだけじゃないかの?」
「……それは、しかし――」
「さらにこれだけじゃない。ふ、ハッキリ言うが、これから続くのはいいとこ無しな日本軍の問題点の列挙になるぞぃ? よいかの、覚悟は」
「……は。ここで終わるのも気になります故、どうぞ、であります」
「ふむ。……まず戦死者のうち三十五万人以上が“海没死”者じゃ。つまり、船に乗っていて、んで、爆撃やらで死んだ兵士のことじゃな。フフ、日本の海軍は優秀とかなんとかいう幻想があるらしいが、統計的に、日本海軍の軍船は一隻当たり1.4隻の船を沈めるのが手一杯。同じ時代のドイツ軍は一隻の喪失で3.4隻。こと相手国のアメリカは一席当たり25隻じゃ。こちらも桁が違うの」
「それはしかし、日本軍は海軍を主軸に戦争を行ったからでは? であります」
「さよう。海戦に固執しておった。そこに優位が有り続ける、という幻想を抱いておったのかのぉ。……ゆえに、かどうかは知らんが、日本軍は戦争末期、船の数を増やすことに固執した。むろん、船がなければ兵も物資も補給できんから当然じゃが……。しかし、それは結果的に粗製濫造となり、速度も遅い、つまらん船しか作れなくなる」
「むぅ」
「兵を運ぶ船の船底には劣悪な環境に詰め込まれた兵士がさながら満員電車のように、あるいは奴隷商船のように詰め込まれるだけ詰め込まれておった。温度と湿度の上昇により中枢神経障害を起こす兵士も出た。じゃが、年若い兵士は風通しのよい看板に上がることもままならなかった」
「な、なぜでありますか、であります」
「一番良い環境には古参の兵士が陣取っとったんじゃって」
「譲らなかった、のでありますか? 年若い兵士に場所を……」
「さぁの? あるいは、日本人お得意の空気を読むなんちゃらで、言い出せなかったとかかの? カカ、命がけの仲良しこよしか。日本人にはおあつらえ向きじゃな? まぁ、古参兵殿にはそんな精神はなかったようじゃが」
「…………」
「ちゅうても、そもそも粗製濫造で作られた低速度の船は撃沈されることも多かったじゃろう。じゃからこその海没死者が三十五万越えなんじゃろうし。さらにそんな状況が続けば、兵士達の士気も下がる」
「万を超える死者が出れば、その情報が全く兵士に伝わらない、ということはあり得ないでありますからな、であります……」
「しかも運ばれた先の戦地じゃ餓死者と病死者続出じゃしな。じゃなくても、戦争なんじゃ。『敵の銃弾で撃たれるかも』。『爆弾を落とされるかも』。『もしこの船を生きて降りられたとしても……』、と考えるのは人として自然じゃろ。じゃからか、船で輸送されとる最中に発狂する者も出てきたそうじゃよ? 過密状態で、いつ、敵の魚雷や大砲で死ぬかも知れない環境じゃ。ストレスは半端ではなかったじゃろうよ」
「…………」
「あぁ、あと“特攻”とかいう野蛮極まりない、人を人とも思わない兵器とか戦術とかも、日本じゃ流行ったらしいな。しかし、そっちも鳴かず飛ばずじゃった、と」
「鳴かず飛ばず……」
「特攻による日本軍の戦死者数は3848人。この攻撃によって沈没した船の数は47隻。しかも、正規空母、戦艦、巡洋艦は一隻も撃沈できなんだ」
「い、一隻も、でありますか、であります」
「さよう。……のぉ?」
「?」
「自国の兵士を命がけの爆弾誘導係にして、得た結果がこれなんじゃよ。優秀? なにが? って感じがせんか? むしろ、これで冗談でも『優秀』とか自惚れられる精神に怖気が走らんか?」
「…………」
「そういえば、大人気の零戦も、防御を捨てた設計だからこその運動性能じゃったなぁ。つまり、乗組員の安全など二の次じゃったわけじゃな? ハッ、大した戦闘機じゃわ。犠牲を顧みない日本の精神そのもの、か? カカッ」
「…………」
「さらに続くのは“自殺”。こんな絶望的な状況じゃ、命を自ら捨ててもおかしくない、という状況の継続こそがおかしな話なんじゃが。さておき、純粋な自殺者数は不明なんじゃな。『自殺よりも戦死の方が名誉』とかいう、これまた頭おかしい理屈で、自殺者を戦死者として計上する場面が散見されたらしい。よって、自殺者の数は不明、と」
「……頭おかしい、でありますか、であります」
「おかしいじゃろ。立派に戦って死のうが、自分の銃で脳を破損させて死のうが結果は同じ。むしろ、自ら命を絶った、その追い込まれた精神を真正面から捉えもせず、偽装によって事実を覆い隠す行為には、死者に対する誠実さの欠片さえもワシには感じられんな」
「…………」
「さらにさらに、じゃ。日本軍兵士は捕虜になることも許されなんだ。捕虜になるくらいなら自死しろ、という風潮があった。病気やケガで動けない兵士は、そのために自死することを強要され、拒めば自分たちの上官や仲間から銃を向けられ、弾を撃ち込まれた。……要するに“味方から殺害”されたわけじゃ」
「…………」
「“自傷”者も続出した。ケガをすれば負傷兵として前線を離れられると考えた兵士達は、自分の持つ銃を自分の身体に向けた。自分で自分を撃ってでも逃げたかったわけじゃな。……じゃが、あまりに多く自傷者が出たため、軍は自傷した者とそうでない者の見分け方を研究し、見破るようになった。……おぉ、努力とはなんと美しい。方向が違えば禍々しいほどにのぉ」
「…………」
「あぁ、あと、この極限状況下のストレスを発散させるために、上官による部下いびりも酷かったそうじゃ。“いびり殺し”もあったほどにな」
「……いびり、殺し」
「そもそも日本は物資も人的資材も乏しい国じゃ。それは今もなお続く日本国の弱点であり構造的欠陥ともいえる。何しろ狭い。自分の国だけでは自活さえ困難な国じゃ。食もそうじゃが、鉄やらなんやらの資源そのものが少ない。主要エネルギー源たる石油すら完全に他国だよりよ」
「たしかに狭い国ではありますか、であります……」
「そんな国があまりにも手を広げすぎた結果、様々な不足が生じる。戦地が広がれば自ずと兵士が必要になる。兵士を揃えるには弾薬や銃はもちろん、軍服やらの装備。むろん、食糧も必要じゃ。衣食がなければ行動はできん。……が、さっきも言うたが、日本は資源の乏しい国じゃ。するとどうなるか」
「……色々なものが行き届かなくなる、でありますか、であります」
「さっきから何万とか死者の数を数えとるが……。要するにそれだけいなくなった。兵力として損なわれた。当然、各地で人の数が足りなくなる。戦地を維持したければ派兵するほかない。すると、今まで兵士として計上できなかった者まで駆り出される。しかし、計上できなかったのには相応の理由がある。年を食っておったり、体力が無かったり。理由や事情がある者が兵士となれば、当然、軍隊としての質が下がる」
「……しかし、事情があるなら補えば――」
「『補う』という優しい発想は、日本軍にはなかった。ちゅうか、そんな余裕ないわな。足りないから無理矢理こしらえた急増の兵士に、個々人それぞれの事情に応じたケアやらサポートなんかを行うわけがない。しかも、それでも数は減り続ける。戦場でバッタバッタと死んでいくし、運ぶ途中でも死ぬしで、不足だらけじゃわ」
「…………」
「それでも生きておる兵士はおる。が、このメチャクチャブラックな環境じゃ、休みを取ることも叶わん。疲弊と摩耗は兵士に負荷をかけ続ける。あげく、戦力の向上のために戦闘機乗りなんかに使われたのがヒロポンなどの麻薬じゃ。麻薬を打ってでも戦うことを余儀なくされたんじゃ。ふむ、自分の命を絶つには十分な環境かも知れんのぉ」
「…………」
「というかの、兵士の食糧やらは基本的に現地調達、ちゅう日本軍の基本方針からしておかしいわな」
「現地調達、でありますか、であります。それは一体……?」
「じゃから、戦場となっとった現地の住人たちから奪い取れってことじゃな。平たく言えば“略奪”じゃ」
「略奪が、軍隊の基本方針だった、と……?」
「そうじゃ。のぉ? 何千何万もの兵士に食わせる方法が現地民からの略奪じゃぞ? しかも、アジア各地に日本軍は手を伸ばしておった。ほ、そりゃあ、未だにアジアのどこでも日本が嫌われ者なのは当然の帰結じゃろうなぁ。すました顔と平和ボケな頭じゃっても、かつては大した侵略者じゃったんじゃもの。むしろ余計に腹も立つわな」
「…………」
「さらにさらにさらに、じゃ。もう長いから簡潔に言うが、機械化が遅れた結果、何十キロもの装備は基本人力と馬で運ばされ、飛行場を作るにも人力。要するに、工作員や現地の者が朝から晩までこき使われたんじゃ。物資の乏しさは戦争の継続に伴い悪化の一途を辿り、歩いておるだけで底が抜ける靴、みすぼらしい軍服姿は「どこが皇軍か」と言わしめるほどじゃった」
「…………」
「繕おうにもミシンがない。ミシンがあってもまともな糸すらない。戦場では無線通信機すらなく有線通信ばかりに頼った結果、断線によりマトモに連絡も付かない有様を引き起こし、無線通信機は配備されず、各隊は『孤軍奮闘』という虚飾のもと、各個撃破された。日本軍の旧式の戦車はアメリカの戦車に歯が立たず、生み出された戦法は『歩兵による爆弾の近接投下』、つまりは特攻じゃな。近づく前に撃たれるという発想はなかったんじゃろうか。それともそれほど逼迫しておったのかの?」
「…………」
「こういう状況じゃ、普通『産めよ増やせよ』になるもんじゃが、それはなかった。男が国におらんかったのもそうじゃが、『一度嫁いでからは、男は夫以外にはないものだ』とかなんとかいう、薄気味悪い童貞の幻想みたいな思想が蔓延して未亡人は亡き夫の家に縛り付けられ、再婚もままならん。となると、兵の数……というか民の数は減る一方。すると徴兵の敷居がまた下がり、今度は少年が戦場に駆り出される。未発達な少年兵は運ばれる船で半死半生となったそうじゃ」
「…………」
「この戦争の中で、日本人の心の伝家の宝刀とでもいうべきかもしれん戦艦大和じゃって、所詮は時期を見誤ったガラパゴス的、あるいは恐竜的進化の末路と考えれば、特に礼讃するべき箇所もない。むしろこれだけ悲惨な状況下でよくもまぁ、こんな無駄を許したな、と日本国の現実把握能力の不足の塊のような戦艦とワシには思えるな。実際、大した活躍もできずに沈没したわけじゃし」
「…………」
「まだあるぞい。兵士は湿った土地でまともな靴も与えられず戦闘したために重度の水虫に悩まされ、昼間の戦闘じゃ歯が立たなくなった戦闘機乗りは夜間襲撃をメインに据えられた結果、昼夜逆転の生活を余儀なくされノイローゼになる者もでてきた。戦後、マラリアの完治に三十年かかった兵士もおる。戦死に計上されない軍人・軍属の者、民間人の被害者は枚挙に暇がないじゃろう」
「…………」
「なぁ?」
「……なんでありますか、であります」
「これでもまだ『日本軍が優秀じゃった』、とかなんとかいう、しょうもない冗談を本気にする気は無いじゃろう? 『もし日本が戦争に勝ってたら』? ハッ、歴史にifは付きものじゃが、こんなifはありえんな。どんな奇跡が起きても無理じゃ。敗因となるべき悲惨な要素が多すぎる」
「…………」
「『日本は素晴らしい』。『日本人は素晴らしい』。……ほほ、よしよし。そういう幻想を抱いて生きるのは自由じゃよ。思想の自由は何よりも尊重されるべきとワシは思うしな。じゃが、日本が素晴らしかろうが、日本人が素晴らしかろうが、個々人それぞれの価値の底上げには決してならん。自分たちの価値の無さ、自信のなさを『国家』や『民族』は補ってはくれん。所詮、国家も民族も、所詮はたまたまそこに生まれついた程度の薄弱な根拠を基軸とした幻想じゃからな」
「? 何の話でありますか、であります」
「なに、ベチャベチャしたナショナリズムも結構じゃが、『国への愛情』とかいう自家撞着は、現実への盲目を誘い、結果、悲惨な過去を繰り返すだけじゃ、ちゅうことよ」
「??? わからないであります」
「忘れてはならんのは、『アジア・太平洋戦争』っちゅうのは、『日本は強い』、『日本は素晴らしい』、『日本が負けるわけがない』、という幻想を信じ込み、調子に乗った『日本軍兵士』という職に就いていただけの“日本人”が引き起こし、継続させ、三百十万もの自国の人々を殺させ、それ以上の被害者をだし、周囲の国々からの略奪や殺戮や隷属を起こし、本土に二度の原子爆弾を落とされる結末となったという事実じゃ」
「…………」
「『戦争は悲惨でやってはいけないこと』――文言だけをなぞるだけでは無意味じゃよ。その悲惨さをきちんと認識してこそ、実感できる」
「…………」
「その上で、言えるのじゃろうよ。『戦争は悲惨で、やってはいけないことなのだ』、と」
「……で、ありますか、であります」
「ほほ、そうワシは思っただけの話よ。……以上じゃ」